「中東にて」 菊池絵美 in the Middle East  by  Emi Kikuchi

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カテゴリ: ・Ibrahim Bin Adham( 1 )


2007年 08月 18日

Ibrahim Bin Adham イブラーヒーム・イブヌ・アドハム


まだ(バルフの)王子だった頃のことである。ある日狩りに出た彼は、一匹のカモシカをおって馬を駆ったが、そのうちお供の兵士たちから遠く離れてしまった。馬は疲れ果てて汗びっしょり、・・・広漠たる砂漠の真っ只中で、ついに精根尽き果てた時、突如、カモシカが言葉を語りだした。くるっと振り向いたかと思うと、「こんなことのために創られた貴方ではあるまいに」・・・私を狩りの獲物にするために、わざわざ無から存在界に移しなさったわけではあるまい。仮に私をつかまえたとしても、それが一体何になろう、ということだ。
 それを聞くや・・・一声絶叫し、馬から跳び下りる。見渡せど、この広い砂漠に人影もなく、たった一人だけ羊飼いがいた。きらびやかに宝玉を飾った王者の衣を武器や馬もろとも差し出して、・・・その羊飼いの着物に着替えて、いずこもなく立ち去っていった。

・・・彼はカモシカを狩りするつもりだった。が、はカモシカを使って彼を狩りし給うた。

(「フィーヒ・マー・フィーヒ」 マウラーナ著 -「ルーミー語録」より-)




「私が“神よ、私の数々の罪を赦したまえ”と語りかけると、“現世のことは我に語れ、己自身の言葉を語るな、おまえ自身の言葉など他のものたちが言うにまかせるがよい”と聞こえた」


。。。ムウタスィム(第八代カリフ)が、イブラーヒームに尋ねた。
「何を生業とする者か」
「私はこの世を、この世のみを求める者たちにあずけ、来世は、来世のみの希求者にまかせました。私の選んだ道は、この世で至高なる神の名を唱え、あの世で栄光ある神と対面することです」
。。。「何を職とするか」
「あなたは知らないのか、神のために働く者が、どんな職も必要としないということを」


「墓場は日々栄え、町は荒れ放題となる」


(「イスラーム神秘主義 聖者列伝」 ファリード・ゥッディーン・ムハンマド・アッタール著 藤井守男訳 国書刊行会 より)
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by Emi_Kikuchi_jp | 2007-08-18 15:30 |  ・Ibrahim Bin Adham